EC運営代行事業者が知っておくべき最新の物流・配送サービス事情

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EC市場の拡大に伴い、物流・配送サービスは業界の成功を左右する重要な要素となっています。

本記事では、EC運営代行事業者が押さえておくべき物流の基礎知識から最新トレンド、選定ポイントまで幅広く解説します。

EC物流の基本と現状課題

EC物流とは、顧客が注文した商品が倉庫から自宅に届くまでの一連のプロセスを指します。

単なる配送だけでなく、入荷、保管、梱包まで含む総合的な仕組みです。

EC配送の基本的な流れ

EC配送は5つの主要プロセスで構成されています。

まず「入荷・検品」では商品の数量や品質を確認します。

次に「保管(棚入れ)」で効率的に商品を収納し、「管理(棚卸し)」で在庫数や財務状況を把握します。

「梱包」では顧客満足度を左右する適切な包装を行い、最後に「配送」で商品を顧客の手元まで届けます。

これら全てのプロセスがシームレスに連携することがEC物流の成功には不可欠です。

EC物流が直面する4つの課題

現在のEC物流は複数の深刻な課題に直面しています。

まず「宅配件数の急増」によりラストワンマイル配送の負担が増大しています。

また「迅速配送ニーズの高まり」により当日・翌日配送対応の圧力が強まっている一方、「再配達問題」も依然として解消されていません。

さらに「ドライバー不足と高齢化」は2024年問題(労働時間規制強化)と相まって業界全体の持続可能性に関わる重大な課題となっています。

課題 現状 影響
宅配件数の増加 年々増加傾向 配送コスト上昇、ドライバー負担増
迅速配送ニーズ 翌日・当日配送の標準化 オペレーション複雑化、コスト増
再配達問題 再配達率約10% 人的リソース浪費、環境負荷増大
ドライバー不足 高齢化と人材確保難 サービス持続性への懸念

EC物流における配送手段の選択肢

EC運営には複数の配送手段があり、それぞれ特性や適した商品が異なります。

最適な配送方法を選択することで、コスト効率と顧客満足度のバランスを取ることができます。

宅配便サービスの特徴と活用法

宅配便は対面での受け取りを基本とする配送方法で、追跡サービスや配達日時指定が可能な点が大きな特徴です。

ヤマト運輸、佐川急便、日本郵便(ゆうパック)などの主要事業者が提供しており、中型〜大型商品や高価な商品の配送に適しています。

特に注目すべきは温度管理サービスで、冷蔵・冷凍・常温の三温度帯に対応した配送が可能です。

EC運営代行事業者は、顧客のニーズに合わせて複数の宅配業者との連携体制を構築しておくことが重要です。

メール便の効率的な活用方法

メール便はポスト投函で完結する非対面配送方法です。

日本郵便(ゆうメール)やヤマト運輸(ネコポス)などが主なサービス提供者となっています。

不在時でも受け取り可能で配送料が安いという大きなメリットがあり、書籍や衣類、小型雑貨などの配送に最適です。

EC運営代行事業者としては、同梱計算機能や同梱上限数設定など、システム面での対応も考慮する必要があります。

商品の特性に応じて宅配便とメール便を適切に使い分けることで、全体的なコスト削減と顧客満足度向上の両立が可能になります。

次世代配送:ドローン配送の可能性

ドローンを活用した空からの配送は、まだ実験段階ではあるものの、EC物流の未来を切り開く重要な技術として注目されています。

遠隔地や災害時など特殊状況下での配送に大きな可能性を秘めており、軽量で緊急性の高い商品の配送に特に適しています。

EC運営代行事業者としては、現時点で本格導入するというよりも、技術動向を注視し、将来的な導入に向けた準備や知識獲得を進めておくことが賢明です。

関連法規制の整備状況も同時に把握しておくことが重要でしょう。

EC物流の最新トレンドと革新的アプローチ

物流業界は技術革新と環境変化に対応するため、新たなアプローチを次々と生み出しています。

EC運営代行事業者はこれらのトレンドを把握し、取り入れることで競争優位性を確立できます。

物流DXによる効率化と顧客体験向上

物流分野でのデジタルトランスフォーメーション(DX)は急速に進展しています。

倉庫内作業の自動化は、ピッキングロボットやAGV(無人搬送車)の導入によって人手不足問題を緩和し、作業効率を大幅に向上させています。

AIによる在庫管理や需要予測では、販売データから将来の需要を高精度で予測し、最適な在庫量を維持することでムダを削減しています。

配送ルート最適化システムは、交通状況やドライバーの労働時間を考慮した効率的な配送計画を立案し、燃料コスト削減と環境負荷軽減に貢献しています。

さらに、リアルタイム追跡システムの高度化により、顧客は商品の現在位置をリアルタイムで確認でき、顧客満足度向上につながっています。

共同配送ネットワークの拡大

複数企業や異業種間での共同配送は、持続可能な物流モデルとして急速に広がっています。

この仕組みでは、各社が独自に車両を走らせる代わりに、配送ルートや配送車両を共有することでコスト削減と効率化を実現します。特にラストワンマイルにおける負担軽減効果は大きく、同一エリアへの配送を一度にまとめることで走行距離と配送回数を削減できます。

また地方過疎地でも、複数社の荷物をまとめることで経済合理性のある配送サービスを維持できるようになります。

さらに、CO₂削減の観点からは、EV/FCV車両の共同導入も進んでおり、環境負荷の少ない配送体制構築に寄与しています。

災害時には、単独企業では対応が難しい状況でも、ネットワーク全体で柔軟な対応が可能になるという安全面でのメリットも注目されています。

フィジカルインターネットの構想と実現に向けた動き

フィジカルインターネットとは、インターネットの情報伝達の仕組みを物流に応用する構想です。

この概念に基づき、物流情報をリアルタイムで共有する基盤整備が進んでいます。

配送データの標準化と共有により、複数の物流事業者間でシームレスな連携が可能になり、積載効率向上や物流リソースの最適化が実現します。

特に広域輸送においては、目的地近くの物流拠点間で荷物の受け渡しを行う「リレー方式」が導入され始めており、長距離ドライバーの負担軽減に貢献しています。

EC運営代行事業者としては、この新しい物流エコシステムに対応できるシステム連携や業務フローの見直しを検討する時期に来ていると言えるでしょう。

EC運営代行事業者のための物流・配送戦略

EC運営代行事業者が成功するためには、効率的な物流体制と顧客満足度の高い配送サービスが不可欠です。

以下では、実践的な戦略と意思決定ポイントを解説します。

自社物流と外部委託の選択基準

物流業務を自社で行うか外部委託するかは、事業規模や商品特性によって慎重に判断すべき重要な決断です。

自社物流のメリットは、配送プロセスの完全コントロールによる迅速な対応やカスタマイズ配送の実現にあります。

一方で、人件費や設備維持費などの固定費負担が大きく、少人数運営では作業量の多さからヒューマンエラーのリスクも高まります。

対照的に、外部委託では専門物流会社のノウハウとスケールメリットを活かせるため、大量発送にも柔軟に対応可能で、売上規模の変動にも対応しやすいという利点があります。

しかし、配送業者のサービス品質に依存するため、顧客満足度が左右される可能性や、細かなカスタマイズ対応が難しいという制約も存在します。

EC運営代行事業者としては、取扱商品の特性や顧客ニーズ、事業成長フェーズを総合的に判断し、場合によってはハイブリッドモデル(基本は外部委託、特殊商品のみ自社対応など)の採用も検討すべきでしょう。

配送業者選定の4つの重要ポイント

適切な配送業者の選定は、EC事業の収益性と顧客満足度に直結します。

まず「料金」については、単に安いだけでなく、自社の利益構造や顧客負担との最適なバランスを考慮する必要があります。

特にEC運営では送料無料サービスが競争優位になることも多く、その場合の自社負担コストを精査することが重要です。

「スピード」については、当日・翌日配送の需要増加に対応できる体制を持つ業者を選ぶことで顧客満足度向上につながります。

一方で、最近では「ゆっくり配送」という環境配慮型のオプションも登場しており、ポイント還元などと組み合わせて選択肢を提供する戦略も検討価値があります。

「安全性」に関しては、商品破損や紛失時の保証制度の充実度や追跡機能の精度を確認し、特に高価商品を扱う場合は重点的に評価すべきです。

最後に「利便性」では、コンビニ受け取りや宅配ボックス利用などの多様な受取オプションを提供できる業者を選ぶことで、顧客の様々なライフスタイルに対応できます。

これら4つの要素を総合的に評価し、自社の商品特性や顧客層に最適な配送パートナーを選定することがEC運営代行事業の成功には不可欠です。

配送コスト削減のための実践的アプローチ

EC運営において配送コストの最適化は利益率向上の重要な要素です。

小さな商品は定形外郵便の活用が効果的です。

規格内(長辺34cm以内、短辺25cm以内、厚さ3cm以内、重さ1kg以内)と規格外(長辺60cm以内、三辺合計90cmまで、重さ4kg以内)の2種類があり、全国一律料金(規格内120円〜、規格外200円〜)という経済性が魅力です。

商品サイズに合わせて定形外郵便と宅配便を使い分けることで、大幅なコスト削減が可能になります。

また、発送量が多い場合は宅配業者との特約締結も検討すべきです。

多くの宅配業者は、一定量以上の継続的な発送がある場合、割引料金での特約締結に応じる可能性があります。

割引率や条件は個別交渉となるため、複数の業者から見積もりを取り比較検討することが重要です。

さらに、同一顧客の複数注文を可能な限り一つの配送にまとめる「同梱発送」の仕組みを整えることも、1件あたりの配送コスト削減に効果的です。

この際、システム面での対応(注文統合処理など)も併せて検討する必要があります。

最新の発送代行サービスとその活用法

成長するEC市場では、専門的な発送代行サービスの利用が一般的になっています。

これらのサービスを活用することで、EC運営代行事業者は本業に集中しながら高品質な物流を提供できます。

発送代行サービスの種類と選び方

発送代行サービスは大きく「フルフィルメントサービス」と「単純発送代行」の2種類に分類できます。

フルフィルメントサービスは在庫保管から梱包、配送までをトータルで請け負うサービスで、商品の入荷から顧客への配送までの全工程を一括して委託できます。

これに対し単純発送代行は、梱包と発送のみを代行するサービスで、在庫は自社で管理するモデルです。

選択の際には、取扱商品数や注文頻度、商品特性(大きさ、重量、温度管理の必要性など)を考慮する必要があります。

また、ECサイトとの連携機能や、返品対応の柔軟性、追加サービス(ギフトラッピングなど)の有無も重要な判断基準となります。

代行業者によって得意とする商材や配送エリアが異なるため、自社の商品特性や主要顧客層の居住地域に強みを持つ業者を選定することが成功のカギとなります。

発送代行サービス活用の利点と注意点

発送代行サービスの最大の利点は、専門業者のノウハウとインフラを活用することで、物流品質の向上とコア業務への集中が可能になる点です。

特に繁忙期の対応や急激な注文増加時にも柔軟にスケールアップできる点は、EC運営の安定性向上に大きく貢献します。

また多くの代行業者は複数の配送業者と提携しているため、顧客に最適な配送方法を選択できる幅が広がるメリットもあります。

一方で注意すべき点もあります。

まず顧客データを含む個人情報の取り扱いについては、委託先の情報セキュリティ体制を十分に確認する必要があります。

また、特殊な梱包要件がある商品や、高価格帯商品の取り扱いについては、代行業者の対応力を事前に確認しておくことが重要です。

さらに、コミュニケーションの質も重要で、問題発生時の迅速な対応や改善提案が得られる業者を選ぶことが、長期的な関係構築には欠かせません。

これらの点を総合的に評価し、自社のビジネスモデルに最適な発送代行パートナーを選定することが、EC運営代行事業の成功には不可欠です。

サステナブルな物流への取り組みと将来展望

環境意識の高まりとともに、ECの物流においてもサステナビリティへの取り組みが重要な差別化要因となっています。

最新の動向と今後の展望を理解し、持続可能な物流体制の構築を目指しましょう。

環境に配慮した包装と配送の実践

サステナブルな物流の第一歩は、環境負荷の少ない包装材と配送方法の採用です。

近年では生分解性素材を使用した緩衝材やリサイクル可能な段ボールなど、環境に配慮した包装材の選択肢が増えています。

過剰包装を避け、商品サイズに合わせた適切な大きさの資材を使用することも重要です。

また、配送においては電気自動車や天然ガス車などの低排出ガス車両の活用が進んでいます。

特に都市部では自転車配送やウォーキング配送といった完全にCO2を排出しない配送方法も注目されています。

さらに、配送ルートの最適化システムを導入することで、走行距離の短縮とそれに伴う環境負荷の低減が可能になります。

EC運営代行事業者としては、これらの環境配慮型物流を積極的に採用し、その取り組みを顧客に伝えることで、環境意識の高い消費者からの支持獲得につなげることができます。

2025年以降のEC物流予測と準備すべき対応

EC物流は2025年以降も大きな変革が続くと予測されています。

まず、AIやIoTを活用した完全自動化倉庫の普及が加速するでしょう。

ロボティクス技術の発展により、人手をほとんど必要としない物流センターが現実のものとなり、24時間365日の安定した出荷体制が構築されます。

次に、ラストワンマイル配送の革新として、自動運転配送車やドローン配送の実用化が進むと見られています。

法規制の整備と技術の成熟に伴い、特に人口密度の低い地域での活用が期待されます。

また、ブロックチェーン技術を活用したサプライチェーンの可視化も重要なトレンドとなるでしょう。

商品の生産から配送までの全工程を追跡可能にすることで、偽造品防止や品質保証の信頼性向上につながります。

さらに、シェアリングエコノミーの考え方を物流に応用した「クラウド型物流」の普及も予測されており、需要変動に柔軟に対応できる物流リソースの共有モデルが発展すると考えられています。

EC運営代行事業者としては、これらの技術動向を注視し、早期の実証実験参加や技術導入検討を進めることで、競争優位性の確保につなげることが重要です。

まとめ

EC物流・配送サービスは単なる商品の移動にとどまらず、顧客体験とブランド価値を左右する重要な要素です。最新技術の導入と効率化、サステナビリティへの取り組みが今後のEC運営代行事業の成功を決定づけるでしょう。

  • EC物流は入荷から配送までの一連のプロセスを包含し、全体最適化が重要
  • 宅配便、メール便、ドローン配送など多様な配送手段の特性を理解し使い分けることが必須
  • 物流DXと共同配送ネットワークが業界の新たな標準となりつつある
  • 自社物流と外部委託のバランスは事業規模と商品特性に応じて最適化すべき
  • サステナブルな物流への取り組みが顧客からの支持獲得と長期的な競争力に直結

EC運営代行事業者の皆様は、これらの最新トレンドを把握し、自社サービスに積極的に取り入れていくことで、クライアントに付加価値の高いサービスを提供できるでしょう。まずは現在の物流体制を再評価し、改善の余地がある部分から最新の物流ソリューションの導入を検討してみてはいかがでしょうか。

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